抹茶が品薄】例年より在庫が少なくなっています。7月発売予定の商品は、6月に予約注文の受付開始予定です。

一回の注文合計1,500円(税込)以上で国内は送料無料!<海外にも配送可!90カ国以上に発送実績があります>

Experimental.

#0906 Matcha Kurumy - toasty flavor profile with hints of walnuts

抹茶の保管状況と品質

Matcha Storage and Quality

StaffYunomi |

こちらは、「Matcha storage and quality(抹茶の保存と品質)」という英語記事を、日本語でわかりやすく翻訳・要約したものです。

抹茶の保存と品質について

読了時間:約5

私たちYunomiのサイエンスチームは、「抹茶の保存温度や保存期間が、その品質にどのような影響を与えるのか?」をテーマに、国内外の科学論文を調査してみました。

調査の結果、抹茶に適した保存方法は、一般的に“高品質で加工度の低い自然食品”に推奨される方法とほぼ一致していることがわかりました。
それはつまり:

「密閉容器に入れ、直射日光・湿気・酸素を避ける。短期保存なら冷暗所、長期保存なら冷蔵・冷凍が理想」

という基本ルールです。

この記事では、重要な3つの論文の要点、抹茶の品質劣化の仕組み、伝統的な保存方法や点前における視点、そして一般消費者やカフェ向けの実践的な保存アドバイスについて紹介します。

文献レビュー

1. 「原料抹茶の保存条件が品質に与える影響」茶業研究報告 第93号(2002)

原口康弘, 佐野仁, 中里賢一, 外丸和男, 寄下雅子, 荒川正人, & 沢村信一. (2002). 原料抹茶の保存条件が品質に与える影響. 茶業研究報告, (93), 1-8.  https://doi.org/10.5979/cha.2002.1

抹茶を長く美味しく楽しむには、どんな保存方法が良いのでしょうか? 国内のペットボトル茶市場で約25%のシェアを持つ伊藤園の品質管理部門が、保存温度や保存期間が抹茶の品質にどんな影響を与えるかを調べた、興味深い研究を行っています。

この研究では、抹茶の粉末を密封した状態で保存し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や色の測定、酸素の消費量、そしてプロのテイスターによる味の評価など、科学的かつ実用的な視点から品質をチェックしました。調査対象となった保存温度は4種類: -70℃、4℃(冷蔵)、25℃(室温)、37℃(夏場の高温)で、それぞれ最大24週間の経過を観察しました。結果ははっきりしていて:

  • -70℃では24週間後も品質にほとんど変化なし

  • 25℃では12週間で劣化が許容範囲を超える

  • 37℃では3〜4週間で急激に劣化

温度が高くなると、酸素による化学反応が促進され、クロロフィルやビタミンCが分解されやすくなります。未開封の密封抹茶であっても、25℃を超える温度では急速に品質が低下するという重要な知見が得られました。著者らは、は、温度が高くなるほど酸素による化学反応が活発になり、クロロフィル(抹茶の鮮やかな緑のもと)やビタミンCがどんどん失われてしまうことを指摘しています。

この研究から得られる重要なメッセージは、未開封で密封された抹茶の粉末は4℃以下では品質が安定しているものの、25℃を超えると密封された袋であっても品質が急速に劣化するという点です。

抹茶をより長く、より美味しく楽しむためには、「なるべく涼しく、そして酸素や湿気から守る」ことがカギになりそうです。

2. 「抹茶の抗酸化活性とカテキンの安定性における保存温度の影響」

Kim, J.M., Kang, J.Y., Park, S.K. et al. Effect of storage temperature on the antioxidant activity and catechins stability of Matcha (Camellia sinensis). Food Sci Biotechnol 29, 1261–1271 (2020). https://doi.org/10.1007/s10068-020-00772-0

韓国の有名大学による本研究では、密封容器に入れた抹茶の色の変化、ポリフェノール・フラボノイド含有量、抗酸化活性について、保存温度(4℃〜80℃)および保存期間(1日〜2か月)の違いによる影響を調査しました。

評価項目には、原口氏の研究と同様に、色差計測、分光光度法、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などが使われたほか、水分含有量や抗酸化活性の測定も丁寧に行われました。

その結果、すべての品質指標は、時間の経過および保存温度の上昇にともなって減少することが明らかになりました。なかでも、すべての評価項目において「4℃での保存」が統計的に最も良い結果を示しました。

結果としては、すべての品質指標は、

保存温度が高くなればなるほど、そして時間が経てば経つほど、抹茶の品質は下がる ということでした。なかでも、すべての評価項目において「4℃での保存」が統計的に最も安定して良い状態を保てるという結果がでています。

また、研究では実際の家庭やカフェでは使わないような高温(たとえば60℃以上)も扱われていましたが、参考になるのは、「25℃であれば、7日間くらいの保存なら問題なし」とされています。つまり、短期間なら常温保存も大丈夫です。しかし、やはり冷蔵保存が安心です。

3. 「食品加工と保存中の緑茶カテキンの安定性と検出に関するレビュー」

Ananingsih, V. K., Sharma, A., & Zhou, W. (2013). Green tea catechins during food processing and storage: A review on stability and detection. Food research international, 50(2), 469-479.Food Research International 50.2: 469–479 https://doi.org/10.1016/j.foodres.2011.03.004

シンガポール国立大学・化学科の研究者たちによる食品科学的なレビュー論文では、保存環境が緑茶カテキンの生化学的反応にどのように影響するかについて詳しく調査されています。

この論文では、カテキンが劣化・酸化・異性化・重合といった変化をどのように起こすか、そしてそれらのプロセスが温度・酸素の存在・水分量によってどのように左右されるかが解説されています。

また、このレビューでは、緑茶を使った製品(たとえばペットボトル飲料や焼き菓子など)における、加熱や殺菌といった加工工程が品質に与える影響についても触れており、製造プロセスの違いが風味や健康成分にどう影響するかを予測するモデルも紹介されています。

お茶の品質を守るためには「保存環境」や「加工方法」がとても大切だということが、あらためて実感できる内容です。抹茶や緑茶を使った商品を扱う方にも、きっと参考になるはずです。

抹茶の品質に関する科学

抹茶の品質が低下する主な原因は、クロロフィル(葉緑素)、カテキン、テアニン、抗酸化物質といった風味・見た目・健康に関わる重要な成分が、自然の生化学反応によって分解されてしまうことにあります。

温度が高くなったり、湿気や酸素が多く存在する状況では、酸化・重合・異性化といった反応が加速し、それによって抹茶の色・風味・健康効果に関する指標が劣化してしまいます。 特に保存温度が高ければ高いほど、品質の劣化は速く進むことがわかっています。

たとえば、色がくすんでくるのはクロロフィルの分解が原因です。また、テアニンやカテキンは味に関わる成分ですが、高温や時間の経過によって特に影響を受けやすいとされています。一方、カフェインはこれらほど劣化の影響を受けません。

さらに、水分の混入にも注意が必要です。冷蔵保存していた容器を室温に戻すときに結露が発生したり、密封が不十分だったり、あるいは湿ったスプーンで抹茶をすくってしまうと、容器内の水分量が増えてしまい、品質劣化の原因になります。

伝統的な視点から見た抹茶の保存

学術的な視点だけでなく、茶道における伝統的な抹茶の保存や扱い方も、参考にしてみました。

茶会などに用いられる点茶(抹茶のもとになる茶葉)は、特別に設計された陶器の壺に、和紙を一定の方法で詰めて保管され、涼しく乾燥した環境に置かれるのが一般的でした。

そして、茶会の数日前になると、必要な量だけを石臼で挽いて抹茶にし、漆塗りの茶筒(ちゃづつ)などに移して保存していました。これらの容器は密閉性が高く、抹茶の品質を守るのに適していたのです。さらに伝統的には、陶器製の茶入(ちゃいれ)もよく使われており、細い首、小さな口、ぴったり閉まる蓋が、外気の流入を最小限に抑える工夫となっていました。

こうした陶器の茶入の中には、歴史的な名品として何代にもわたって受け継がれたものもあり、織田信長に献上されたことで命が救われた、という伝説をもつ茶入もあるほどです。現在その一つは東京の美術館に収蔵されています(興味のある方はこちらの詳細な紹介記事をご覧ください)。

おすすめの保存方法

ふだん抹茶を楽しむ一般の方であれば、密閉できる茶筒(もしくはアルミ袋入りの茶筒)で保存するといいです。長期に保存する場合、冷蔵庫に入れれば品質を長く持てますが、冷蔵庫内の匂いがうつらないように二重三重にラップなどをかけるといいかもしれないです。ただし、冷蔵庫から出す際、すぐ開けると結露が抹茶をダメになるので、2−4時間に置いて、中の温度が上げてから開封してください。

カフェやレストランなど、大量の抹茶を扱うお店の場合は、冷凍保存された大袋から、数日で使い切れる分だけを取り出して常温で保存するのが理想的です。日々使う分は、密閉できる茶筒に入れておくとよいでしょう。

どの方法も、「密閉」と「低温」がカギです。ただし、冷蔵庫や冷凍庫保存が長期的に一番いいですが、結露の心配があるので、必ず数時間置いてから開封してください。

抹茶の香りと鮮やかな色を楽しむためにも、ちょっとした保存の工夫が大切ですね。最後まで、ありがとうございました!本記事が抹茶保存の参考になれば幸いです。

その他参考文献

  • Devkota, Hari Prasad, et al. "The science of matcha: Bioactive compounds, analytical techniques and biological properties." Trends in Food Science & Technology 118 (2021): 735-743.
  • Jakubczyk, K.; Kochman, J.; Kwiatkowska, A.; Kałduńska, J.; Dec, K.; Kawczuga, D.; Janda, K. Antioxidant Properties and Nutritional Composition of Matcha Green TeaFoods 20209, 483.
  • Krahe, J.; Krahe, M.A.; Naumovski, N. The Implications of Post-Harvest Storage Time and Temperature on the Phytochemical Composition and Quality of Japanese-Styled Green Tea Grown in Australia: A Food Loss and Waste Recovery Opportunity. Beverages 20217, 25. 
  • Lee, S. U. (2016). The change of catechin and theanine content in green tea during different storage conditions. Culinary science and hospitality research22(5), 267-276
  • Liu, Zheng-quan, et al. "Quality changes and predictive modeling of shelf life of matcha stored at different temperatures." (2020): 198-204.

コメントを残す

ご注意:コメントは公開前に承認されなければなりません