パンデミック中の茶栽培
世界的なパンデミックは、自転車やコンピューターチップなど、私たちの日常生活やサプライチェーンに多大な影響を及ぼし続けています。しかし、国内外で日本茶の生産と消費にどのような影響を与えているか、改めて考えたことはありますか?私のようにお茶をよく飲む方にとっては、家にいる時間が増えたことで、日本茶を楽しむ機会が増えたのではないでしょうか。今日は、新型コロナウイルス感染症が日本の茶業界に及ぼした影響と、それが今もなおどのように影響を及ぼしているかについて少し触れたいと思います。国内外の主な動向を取り上げ、2021年の秋を迎えた日本の茶農家の取り組みについて、いくつかご紹介します。秋といえば、温かいお茶をゆっくりと楽しめる季節になってきましたね! 富澤茶園のティーショップ「グリーンティーラボ」より、2021年10月10日撮影。 茶の間でひと休み 京都府和束町の茶農家、上島さんへのインタビューを読んだ方は、日本の「茶の間」という概念をすでにご存知かもしれません。上島さんはこう語ってくれました。「茶の間とは、お茶を淹れ、淹れて、出し、飲むまでの過程のことです。日本語には『間』という言葉があります。お茶を淹れる『間』と、コミュニケーションの『間』…つまり、茶の間とは、客を家に招き、目の前でお茶を点てることなのです。」 端的に言えば、それはくつろいだ交流の場を生み出す、一種のおもてなしと言えるかもしれません。とはいえ、日本においてお茶はコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしています。パンデミック下では、ソーシャルディスタンスやステイホームの取り組みにより、一部の家庭ではお茶がより多く飲まれていたかもしれませんが、社交の場や集まりが激減したことで、他の空間でのお茶の消費量は減少しました。さらに、企業や事業者が来客に出すお茶の量や贈答用のお茶の量が激減し、お茶業界に大きな影響を及ぼしています。 意外に思われるかもしれませんが、日本においてお茶業界に大きな影響を与えた主要なサービスの一つが葬儀です。パンデミック以前は、主要な茶産地の高品質なお茶が、葬儀のお礼としてよく購入されていました。日本では、葬儀の供え物に対する感謝の気持ちとして、遺族から参列者に贈り物が贈られます。お茶はこうした一般的な贈り物の一つです。しかし、パンデミックによって葬儀の規模が縮小され、これらの贈り物としてのお茶の売上が減少しました。 それでも、お茶関連のすべてが衰退しているわけではないようです。調査によると、特に若い世代(18~29歳)では、パンデミックの影響で茶葉の消費量が26%増加したことが明らかになっています。これは、最近の日本ではペットボトル入りのお茶に頼りがち(つまり、急須で淹れたお茶を楽しむ代わりに)なことを考えると、少し安心できる点です。つまり、茶の間は家庭以外では減少しているかもしれませんが、特に若い世代の間では、家庭でより多く楽しまれてきたのかもしれません。 日本の茶生産の衰退 パンデミックが茶産業、ひいては茶栽培全般に及ぼした影響は、農林水産省(MAFF)の統計データにも反映されています。2019年と比較すると、2020年の荒茶(荒茶)の生産量は全国で15%減少しました。全体的に、収穫時期を問わず減少傾向が見られました(下図参照)。さらに、MAFFが今年実施した最新の調査では、2021年も生産量は回復していないことが示されました。 もちろん、パンデミックに関連したいくつかの要因は、日本の茶業界全体の傾向の中で生じていることも認識する必要があります。例えば、いくつかの茶農家へのインタビューでも触れてきたように、茶農家の高齢化は明らかに大きな懸念事項です。2000年には、65歳以上の茶農家の割合はすでに49%でしたが、20年後(2020年)には、この割合は62%にまで増加しています。茶農家の高齢化と並行して、茶畑の耕作地は減少し続け、茶園の放棄も続いています。 不透明な茶産業の先行きを受け、自治体や団体は日本茶への需要と関心を高めるため、様々な支援策を打ち出している。例えば、国内外の観光客が訪れる京都府を代表する茶産地、和束町では、2021年2月、地元の一般社団法人「えん―TRANCEわづか」が、パンデミックの影響で売上が落ち込み、和束町の茶農家が保管していた煎茶ティーバッグ1,750個を購入し、地域住民に無償配布した。同団体は農林水産省の補助金を活用し、荒茶5,800kgを購入。購入後、全国に配布し、自国の和束茶のプロモーションに役立てている。国内外の観光客の激減(土産物やお茶関連ツアーの売上減少にもつながっている)に見舞われた主要茶産地でも、同様の取り組みが広がっている。例えば、おそらく最も有名な茶産地である静岡では、県が生産者に対し、新商品開発に500万円、販路開拓に300万円の補助金制度を設けました。その結果、茶葉を使ったスパークリング飲料から茶のアロマ製品まで、26の商品がこの制度の対象に選ばれました(9月6日現在)。 希望に満ちた国際的な動向 日本茶の輸出は2016年以降、緩やかながらも着実に増加しており、パンデミックの影響もあって輸出量はさらに増加しています(概ね10年間で倍増しています)。この傾向は、健康に良いとされる日本食の人気が高まっていることが主な要因です(注:日本茶輸出上位5カ国のうち、37%が米国に輸出されています)。 しかし、この上昇傾向を継続させるため、コロナ禍後も日本茶の普及促進を継続できるよう、現在多くの取り組みが進められています。例えば、オンラインプラットフォームを通じて多言語で日本茶に関する啓発イベントを開催したり、シングルオリジンやオーガニックティーなど、海外市場により適した、需要の高い商品を開発したりするなど、様々な取り組みが進められています。 茶農家に刺激を与える 以上が、パンデミックが日本の茶業に与えた影響の全体像です。過去2年間の出来事は、毎日が明るく晴れやかなわけではないことを改めて思い起こさせてくれますが、Yunomiの茶農家の方々に目を向けると、四季折々に変化する茶樹と、皆が美しく調和しているように見えます。ここでは、Yunomiの茶農家の方々の最近の様子をご紹介します。 大武部茶園(京都府和束町) 京都府の茶畑、和束町では、日本政府の緊急事態宣言を受けてほとんどのレストランが閉まっているようですが、おぶぶ茶園では先日、秋の彼岸にちなんでささやかな茶摘みイベントを開催しました(イベントレポートはおぶぶ茶園のブログでご覧いただけます!)。参加者は茶摘みの実習だけでなく、美味しい秋のお弁当を味わい、手摘みした茶葉で天ぷらを作り、摘んだ茶葉でお茶を点てる体験もしました。とても素敵な体験でした! 右から左へ。(1)摘みたての茶葉を使った天ぷら。(2)茶葉を手揉みする工程。写真提供: 京都おぶぶ茶園(2021年10月7日掲載)。 9月30日に緊急事態宣言が解除され、和束茶カフェを含む飲食店が再開し始めています。和束町に徐々に活気が戻ってくることを願っていますが、おぶぶのあっきーさんがいつも茶畑で元気に過ごしている姿を見るのは、本当に心強いです。 おぶぶブログでは、茶農家のあっきーさんが一生懸命ながらも楽しそうに働く姿が見られ、励まされること間違いなしです。写真はおぶぶ茶園より(2021年3月)。 備前屋(埼玉県日高市) お茶のいちょうか工程(萎凋工程)を専門とする備前屋の清水さんは、最近は品評会での審査に精を出しているそう!最近参加したのは第66回狭山茶コンクール。清水さんによると、第2部の手揉み部門には12点の作品が出品されたとのこと。すべて同じ茶葉(厳密に同じ方法で収穫されたもの)から手揉みされたものらしく、まるで茶揉みの技術を競う競技のようだったそうです。そして、埼玉県知事賞を授与されるのはたった1点だけだったそうです…。 清水さんは全体的な印象をどう受け止めたのでしょうか?同じ生葉を手揉みした場合でも、見た目だけでなく品質にも顕著な違いがあったと指摘しました。展示された茶葉はすべてハサミで摘まれたもの(つまり手摘みではない)でしたが、一般的な煎茶に比べて、葉が厚く、大きく、より上品な外観をしていることにも気づきました。これは、機械で摘まれた茶葉では実現できない、印象的な形状です。 第66回狭山茶コンテストの様子。撮影:備前屋(2021年9月26日)。 梶原茶園(熊本県芦北市) 釜炒り茶が絶品の梶原さん。最近、イノシシの被害で茶畑が荒廃したという報告がありましたが、茶園の人々は懸命に作業を続けています。ちょうど秋の収穫を迎えたばかりのべにふうきです。梶原さんはお茶に加え、熊本県芦北町にある拠点で稲作も行っており、今は稲刈りで大忙しです。 上から下へ:1) 秋のべにふうき収穫、2)...